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スーパーでカレーの材料を買って、家に着いた頃はすでに陽が落ちて薄暗くなっていた。長い長い1日が終わろうとしている。
野菜を細かく切ってカレーの具にして心花ちゃんに食べてもらう。反応にどきどきしたが「おいしい!」と喜んで食べてもらえた。心花ちゃんノートに「野菜を細かくすると食べてくれます」と書いた桔花さん宛のメモを挟んでおく。
それから歯を磨いてお風呂に入って同じベッドで寝る準備をした。私は濃厚な1日に疲れて瞼を閉じればすぐ入眠できそうだったが、心花ちゃんの目はらんらんとしていた。
「なんかおはなしして」
そんなリクエストを受けて、読んであげる本を買えばよかったと後悔した。
「じゃあ、おばしゃんの作ったお話をしよう」
半分眠っている脳が作った話には、桃から生まれた亀やら、うさぎと競争するかたつむりやら、月で餅をつく猫などわけのわからない動物がいっぱい出てきた。
そして、いつの間にか2人でくっついて眠っていた。すごく、寝心地が良かった。夢の中に出てきたのは、私と夫と、可愛らしい子どもの3人で仲良く歩いている風景だった。私は夢の中で笑っていたかもしれないし、あまりにも幸福で泣いていたのかもしれない。
夫からのメールに気づいたのは、寝癖頭で顔中によだれを垂らした翌朝のことだった。
真夜中の23時に届いたメールの内容を読む。
「ふふふっ」
そのあまりにも短く、ぶっきらぼうな文章に思わず吹き出してしまった。
「今日は泊まる。明日の朝、必ず帰るから」
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