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まるで室内に雪が降り積もったかのようだ。
しかし辺りに散らばっているのは、そんな風情のあるものではなく、ただの丸めた紙の屑。
僕の書き途中の小説。正確にはボツにした小説の紙屑の山。
書き進めては、「これではつまらない」と原稿用紙をぐしゃぐしゃにして床に放り投げる。
そうしているうちに、部屋中が紙屑だらけになってしまった。
散らかった室内を見渡してため息をつく。
これでは到底、受賞には手が届かない。作家デビューなんて夢のまた夢の話だろう。
僕はスマホを開き、自作小説の評価コメントを見た。
『ストーリーが平凡すぎます。もっと斬新なアイデアを練る必要がありそうです』
一度佳作に入った作品。審査員評価のコメントを何度眺めたことだろうか。
「平凡か……」
今月末締め切りの小説コンテストがある。しかし今回は諦めようか。もう少し色々な作品をインプットしてから応募した方がいいのかもしれない。
そんな考えを巡らせながら、気晴らしにスマートフォンで、創作用アカウントのSNSを眺めていた。
『報告します。〇〇賞の一次審査に受かりました!』
webで小説を投稿している相互フォローの奴だった。
自分の胸の中に、何か黒いものが沸々と湧き上がる。
「こいつの小説のどこが面白いんだ。オチもない、くそみたいな話じゃないか」
舌打ちをしながら、そいつの自慢めいた投稿に『おめでとうございます』と心にもないコメントを残した。
腹が立つ。やはり見送りなどできない。
僕は再び書き出そうと体を起こした。
「あ、紙がない」
原稿用紙を全て使い切ってしまっていた。
僕は未だにアナログ人間で、web投稿であろうと、一度紙に書き起こしてからでないと書けないのだ。
仕方なく紙を買いに、最寄りの駅ビル内にある文具コーナーへ原稿用紙を買いに行くことにした。
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