本の虫のための

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「100円?!」  思わず叫んだ。  僕の小説は自動販売機の缶ジュースにすら及ばない。  落胆していたが、これは賞に応募する前のものだ。ここから書き直してよりよいものにしていけばいい。 「いったい何処が悪かったんだろう。オチが弱いか」  少し書き直して、虫に食わせた。 「あれ?」  文字は消えず、金も出てこなかった。  虫がいなくなったのかと思い、適当に違う話を書いてみた。  文字が消え、120円分の硬貨が出てきた。 「同じような話はお気に召さないというわけか……」  しかし先程より、微量だが値が上がっている。  つまり少しは向上しているということだろう。  この調子で何度も書いていけば、受賞が取れるような話が書けるのではないか。  それから僕は色々な話を書いては、毎日虫に食わせていった。
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