本の虫のための

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「何故泣く? お前は作品に見合った金を得ただろう」  爺さんが聞いた。  僕はいつのまにか泣いていたらしい。  何故だろう。  何故悲しいんだろう。何故悔しいんだろう。  金は貰えた。大賞の金額と同等の。  じゃあ、名誉が欲しかったのか。  絶賛された評価が欲しかったのか。  皆から讃えられたかったのか。  受賞した証が欲しかったのか。  作家デビューの機会を逃したからか。    違う。  違う、違う。  そんなことじゃない。 「あれは」  まだ題名も決まっていなかった。  僕が書き上げた。  僕が最初から最後まで完成させた。  僕の──。 「僕の作品だったのに……」
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