9人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
小道の先の今にも倒壊しそうな家、その屋根代わりのブルーシートも積雪のお蔭で目立たず、いつもより町並みがうんと綺麗に見える。その家の本来の姿を知っている理香は日が差して光る雪に、数時間後の残念な光景も見えるようだった。
――もっと、……。
理香は歩くスピードを少しあげる。隠さなければ生きてゆけない、自身をも疑う、不可解なものが心の奥底にあるから、後悔でも反省でもない言葉を積もらせている。そのことに彼女はとっくに気づいているのだけれども。この雪が解けるように、いつか彼女の心も解ける日がくるのだろうか……。
〈了〉
最初のコメントを投稿しよう!