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高祖父の妻が生んだ子どもは女であった。
これではお前の元にやるわけにはいかないな、と高祖父は雪女に言った。
高祖父の娘はもう十五の歳に育っており、子の成長を待ち続けた雪女が迎えに来たのだった。
伴侶を得られると信じてやって来た雪女はまた相手を失った。
――必ず息子を産ませよう。
高祖父はそう言った。すでに娘の結婚先は決まっており、話も順調に進んでいた。
いつまで騙せるかはわからないが、まずは自分が凍らされ殺される道だけは避けたかった。娘はそれなりに大事だが、自分が大往生した後のことはどうなろうと知ったことではない、とも思っている。自分への恨みの代わりに殺されることがあるかもしれない。息子を産めずに「また次の子を」と娘も誤魔化し雪女を騙すかもしれない。
そうなろうとも、自分が死んだ後のことなら構わぬと、ひとまずこの場の口先だけの約束をする。
――孫をお前の婿にしてやろう。
雪女はその約束を信じ、山へと帰っていった。
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