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そして高祖父の娘から生まれたのが祖父である。
雪女が自分を待っている、というのは幼い頃から聞かされていた。
――その人はだんなさんがほしいの?
訊けば雪女は山の奥深くにひとりきりで生きているという。人の生きる世界に降りてくることもめったにない。それは寂しいだろうと祖父は思ったそうだ。
化生の身ゆえ現れ出でたきっかけも人とは異なり親や兄弟がいるわけでもない。ただひとり雪の中に生まれたその娘を、祖父は憐れんだ。
お前も同じように騙していい、隠れても逃げても構わないと高祖父は祖父に言った。曾祖母も祖父に雪女を騙せと言った。
それはできない、それはしていいことではないと祖父は言ったが、家族の誰もが祖父の善意と想いを認めなかった。
雪女が祖父を迎えに来る前に祖父の縁談が決まり、祖父が困惑している間に結納も祝言も何もかもを滞りなく進めてしまったのだった。
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