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Daily life of murder
「だぁぁぁっ!!!もう!!待てやゴラァッ!!」
「ごめんって言ってるじゃ〜ん♪」
朝からアメリアが怒っている。
その理由は明白…。
クライヴがまた部屋中、薬品だらけにして片付けずに寝たからだ。
その様子をアメリアの兄であるシック、クライヴの弟であるレオルドが苦笑いしながら見る。
2人はいつもの事なのでこのやり取りを放置している。
そのため、クライヴはひたすら追いかけ回されるハメになるのだ。
彼自身嫌ではないようで、むしろ楽しんでいるように見える…。
「ったく…もう…なんでいつもいつも私が片付けなきゃいけないのよっ!?」
「ま…まぁ…そんな怒らなくても…」
「シックは黙ってて!!!!」
ハイ…。
小さい頃の2人はもっとニコニコしている感じだったが、今はクライヴという世話のかかる人間がいるためストレスが溜まっていてアメリアが怒りっぽい…。
「クライヴもさ…?もう大人なんだから片付けぐらいやりなよ…」
レオルドが引き気味にクライヴに言うと、
「そうだねぇ♡レオルドが言うならァ…♡」
とか言ってレオルドにベタつくばかりで片付けなど一切しない。
「ぐぬぬぬぬ…ッッ!!!」
アメリアが歯軋りをしながらクライヴを睨みつける。
こうして彼らの午前は終わるのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昼時…。
「はぁ…またやってんの?クライヴ…」
彼女はニーア。お昼になるとここで昼食を取るついでに、彼らの昼ごはんを作りに来る。
そしてその隣には10歳の男の子、デイヴィス。
彼は小さい頃からニーアと一緒にいて、情報屋をしている。
「またって…睡魔が襲ってくるのがいけないんだよね〜。つまり僕は無実!!そうだろう?」
「はぁ…もう知らね…。勝手にしててよ…。」
ニーアはため息をつきながら、食材を持って台所へ入る。
シックは窓辺で読書。レオルドはいつの間にか手懐けた鳥と遊んで、アメリアはクライヴを再び叱りつけている。
「うるさい…」と、ニーア。
「ホント、ウチの組織ってロクな大人いないよね。」そこに毒を入れるデイヴィス。
ニーアは、なんて事言うんだこの子…という目でデイヴィスを見るが、何事もなかったかのように来る前にニーアに買って貰ったキャンディを舐めている。
昼食を済ませた後、組織のみんなはそれぞれ散っていく。
レオルドとアメリアは散歩に出掛ける。
でもそれは決して楽しい散歩になるのではなく、アメリアにクライヴの愚痴をひたすら聞かされるだけだが…。
クライヴは別の場所へ研究をしに行く。
シックはお気に入りの喫茶店でひたすら読書。昔住んでいた家から何冊か持ってきたものをずっと読んでいる。
ニーアとデイヴィスは組織の家の家事。
なんで自分達が…という思いで毎日やっている訳だが、こうでもしないとここの家はいつか崩壊してしまう…。と思って仕方なくやっている。
ここまで来て何も疑問を抱かなかった者は居ないだろう。
彼らは殺人鬼…。
ここは殺人鬼の組織なのだ。
己の本能のままに人を殺す凶悪犯達の集まり…。
では無い。
確かに殺人鬼集団ではあるが、一応人の為に殺している。
依頼制では無いが、人に頼まれて殺す事もあるのだ。
まぁ確かに本能のままに人を殺す者もいるにはいるが…。それは特定の場合である。
昼頃散らばったまま、レオルドら4人は夜を迎える。
それぞれ取得した情報を元に、それぞれ殺人行動を取る。
ズッ…と肉から包丁を引き離す音が静かな街へ響き渡る。
「はぁ…ちょっと今日怒りすぎたかな…ぐっちゃぐちゃだよ。」
アメリアの周りは血と肉片で一面染っていた。
「ま…。悪くないか。」
すると、シックがやって来た。
「やぁ、アメリア」
「シック…!もう終わったの?」
2人は双子の殺人鬼。
2人は殺傷能力が組織の中でも高く、殺しの仕事が大好きだ。
「うん。今日も随分派手にやったね。」
「えへ…でもちゃんと仕事に沿ってやったよ?どっかのサイエンティストの弟と違って好き勝手してないんだから。」
すると突然上空から【腕】が降ってきた。
それと遅れて血飛沫が空に舞う。
建物の上には人が見えた。
が、それは月に照らされシルエットになってしまう。やがて人は闇夜へと消えていった。
「一番派手にやってるのは私よりもレオルドだと思うけど。」
「まぁね…。」
「…ひっ…!!」
突然上から人が降りてきた。
「みぃ〜つけたぁ…っ!!!!!」
ソイツは鋭い眼光をこちらへ向け、標的を睨みつける。
その瞬間、目にも止まらぬ早さでヤツの腕が振られた。
何が起こったのか分からなかったが気付けば首から鮮血が溢れ出ているではないか。
「あ…っ…!?」
するとソイツは突然人格が変わり、死体の前で泣き出した。
レオルドだった。
「な…なんで死んでるの…!?大丈夫…??ねぇ…!!返事してよぉっ!!!!」
死体はそれに答えるはずもなかった…。
「はぁ…また僕のお仕事が増えちゃうなぁ…」
クライヴがレオルドの元へ着く。
「クライヴ…っ!俺…また…っ!!」
「はいはい。よーしよしよし…。」
血塗れのレオルドを宥め終わった後、2人で死体を処理した。
「それにしても不思議だよねぇ…なんでいっつも人格変わるのさ?」
「そんなの俺が聞きたいよ…皆と違って好きで殺してないし?っていうかクライヴ…人格変わるの何とか出来ないの…?」
涙目でレオルドが聞くと、それに興奮したクライヴがレオルドに抱き着き頬をスリスリする。
「そうだなぁ〜♡レオルドが僕にキスしてくれたら…♡」
レオルドはクライヴを引き剥がし、スタスタと無言で歩く。
「もう…怒らないでよ〜?」
「俺だって何とかしたいんだから…真面目に考えてよね。」
白々しい目でクライヴを睨むとシュンとした顔でクライヴは小さく頷いた。
「あ!レオルドだ!」
向こうからアメリアが走ってくる。その後ろにはシックがスタスタと歩いていた。
「僕の名前は呼んでくれないのね…アメリアちゃん…」
クライヴがボソッと呟くが、そんなものアメリアの耳には届きやしない。
4人は今日あった事をそれぞれ報告しながら家へ帰った。
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