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「女の子が怖がってるでしょうが!」 「ぐわあああっ!」  キャバクラで暴れまわっていた客はあかりの背負い投げにより勢いよく地面に叩きつけられた。ボーイが男を取り押さえ店の外へと連れ出していく。先ほどまで怯えていたキャバ嬢たちの黄色い声援が響く。 「キャー! あかりちゃん格好いい!」 「店長、一丁上がり」 「冴島さん助かったよ! あの客いっつも暴れてたからさ。これ約束の報酬」 「毎度あり。でも結構払ってるけど、大丈夫なの?」 「いいよいいよ。あいつに払わせるから」  店長が外のボーイに加勢していく。恐らくこの後警察に引き渡すか弁償させるかするのだろう。常習犯では庇いようもない。実際グラスもいくつか割れ、物も散乱している。今この瞬間も背広の男性客が去っていったところだ。 「じゃあ……今日これで皆の分奢っちゃおうかな~!」 「おお!!」 「その代わり、何かあったら傭兵・冴島あかりをよろしく!!」  彼女の呼びかけに店は活気を取り戻した。陰と陽が入り混じるこの歓楽街で冴島あかりの名を知らない者はいない。報酬を支払えば、どんなトラブルや困りごとも力で解決する。今夜の大立ち回りも、言ってみればいわば営業活動の一環である。  街の平穏を表で守っているのが警察ならば、裏から守り、支えているのは彼女だ。また、人殺しや筋の通っていないことは引き受けない。暴れん坊に見えて堅いポリシーがあることに惹かれ慕う者も多い。 「冴島さん」  乾杯から間もなく、ボーイがあかりを呼び止めた。 「さっき出ていったお客さん。冴島さんに、って」  それは小さな手書きのメモだった。「退店後にこちらへ」と共に簡単な地図が記されている。横目に見ながらグラスを傾ける。 「お、早速営業の成果あり」
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