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第137話「そいつは清春の親友」
(UnsplashのLarm Rmahが撮影)
岡本佐江はスイートルームのテーブルに一人で座り、清春の作ったシャンパンカクテルを持ったまま、目を伏せた。
やがて口を開き、
「ごめんなさい。部外者がバーのバックルームに入ってはいけないと、わかっていたんですけど。洋輔さんが、今はまだキヨさんに姿を見られないほうがいいとおっしゃるので」
”ようすけさん”と佐江が清春の親友の名を呼んだ時、清春の目には、暗くて狭いコルヌイエホテルのメインバーにあるバックルームが鮮やかに写った。
高い頬骨となめらかな曲線を持った佐江の横顔。
そして、かたわらに立つ美貌の男。そいつは清春の親友だ。
佐江が洋輔の作った酒を手に持ち、身体に手を添えて甘い表情でキスをせがんでいる姿が目の前にあらわれる。
映画のショットのように、優雅きわまりないシーンが脳裏にひらめいた瞬間、井上清春のかぼそかった自制の糸が切れた。
「バックルームで、洋輔とキスくらいしたか」
清春の、低い声はもはや凶悪な響きをかくさない。
いぶかしげに、佐江がこちらに顔を向けた。
あの美しさ、あの清冽さ。あれはもう、清春の親友が手をふれた後か?
洋輔のやつ、やっぱり殺してやる。
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