愛のお花を咲かせましょう

4/90
前へ
/90ページ
次へ
「あ~、足りない……」 軍人という特殊な職業であっても 緊急事態や臨戦態勢、戦闘中以外の平時は 基本的に交代制で家にも帰れるし休暇も取れる 首都警護部隊の隊員は王宮の隣に展開する集落の中に住むのがほとんどで グリフォードとその同僚のスペラは仕事を終えて 集落の傍のいつもの酒屋でその日の疲れを癒していた 「足りない?」 「愛が」 「ふーん」 「……グリフ、余ってない?」 「グリフって呼ぶな。余ってるぞ。欲しいか?」 「欲しい」 伴侶を見つけた幸運な人はともかく 独り身でフラフラしている男女は 愛を求めて行動する 愛が与えられない人生は虚しい ほんの一晩の刹那的なものでも 愛を与え合うことは満たされることだ 「愛」を売り物にする職業の人間も 虐げられることを嫌う 贋物でもいいからそこに愛があると思えなければやっていられない 愛に飢えるのは辛いものなのだ グリフォードとスペラは食事を済ませると スペラの家に引きこもった グリフォードは余りある愛を彼に与える スペラは喜んでそれを受け入れる 有り体に言えばただの性交だけれど 身体の快感を求める大前提には 相手から愛情が注がれることがある 「愛してくれない?」とか 「俺の愛を受け取ってくれないか?」とか そう言って誘い合うのが礼儀だ どんなに無骨で無神経な人間でも 「たまってるから相手しろや」とか 「やばい、ムラムラするから突っ込んで」とか そういうやり取りは絶対にしない そんな虚しい性行為は自分も相手も貶めるから 「まじ、最高……」 「そりゃどうも」 散々絡まりあって抱き合って スペラはベッドで満足げに呟く グリフォードも同意見だ スペラとはたまにこういうことになるけれど 相性がいいのかとても気持ちがいい お互い体力と身体の丈夫さには自信がある 遠慮なく抱くというのは女が相手だと難しいから 「グリフ」 「グリフって呼ぶな。なんだ?」 「結婚しないのか?」 「またそれか」 「だってさぁ」 水軍で将軍になって その任命式典でマディーラを見た だけど彼はいつも通り美しい笑顔を見せただけだった それから数年後に陸軍の将軍にもなった そのときも同じことだった わかっている 彼は国王陛下の寵愛を受ける立場であり グリフォードは国王軍の一員 お互い王の僕なのだ 裏切りは許されない そして二人ともそんなことは夢にも望まない だからいつまでも グリフォードが年に数度王宮へ上がるときのわずかな逢瀬 それ以上に距離を縮められないまま あの約束は果たされないままだった 「グリフォード隊長」 「なんだ」 「隊長と、結婚したがっている人間を両手の指の数だけ知ってる」 「そうか。俺はもっと知ってるぞ」 「でも、しないんだもんな」 「する相手は決めている」 「後宮に咲く、白皙の花だろう」 「そうだ」 むかし初めて王宮でマディーラの姿を見て以来 彼が自分の婚約者だと言うことはやめた 確かに不謹慎なような気がしたからだ 後宮に入るのは簡単ではない 選ばれたものだけが王に仕えるあの場所にいる彼のことを 軽々に口にしてはいけないと思った だけどスペラとは身体もだけれど気も合って 打ち明けたことがあったのだ 子供の頃に彼に求婚して受諾してくれたのだと スペラはぽかんとしていた 「グリフ」 「グリフって言うな」 「マディーラは、あんなところでずーっと勝ち続けているんだぜ?」 「勝ち負けなんか」 「ある。陛下はお一人しかいない。千人の中で、寵愛を受けられるのは一握り……一つまみだ」 「……」 「ましてやあの地位を何年守ってるんだ」 「……」 「少年グリフォードとの約束、覚えていると思う?」 「思う」 「……あっそ」 思うのだから仕方がない 根拠はないが自信があった 果たせないかもしれないけれど覚えてくれている あの笑顔を見ればそう思える スペラは上掛けを蹴り飛ばしてグリフォードの股間に手をやった 「じゃ、今のうちにもらえるだけもらっとこう」 「ああ……今なら、余り気味だからな」 「グリフォード隊長の愛は、みんなが欲しいのになぁ」 スペラはそう言いながらグリフォードの性器を口に含み 念入りに愛撫して育て始める そうされながらグリフォードは頭の隅で マディーラも国王陛下の愛を強請るのだろうかと考え あの美しい自分の婚約者にそれは似合わないような気がした 「あ……あ、いい……!」 横になったままのグリフォードに跨り スペラは彼の性器を自分の後孔へねじ込んだ 今夜三度目なのだから遠慮も慣らしも必要がない 貪るように腰を揺らして快感を追いかけ始める グリフォードは彼を下から突き上げながら胸の突起を摘む スペラの身体がビクンと跳ねて 彼の性器からほんの少し体液が散る 気持ちよさそうに仰け反るスペラをさらに穿つ 他の男だと一晩に三度もしようとは思わない 女相手だと許してくれと本気で拒まれる 愛があるんだろう、スペラにも 「スペラ、よく締まるな」 「んぁん!もっと、突いて、もっと締めてやるから……!」 「ああ、いいぞ……ここだろう?」 スペラを寝台に押し倒し 脚を左右に大きく開かせて 足首を掴んだまま彼の中心に何度も腰を打ち付ける スペラは奥まで突っ込まれるのが好きなのだ 入り口はきつく締まり内部は柔らかくうねり始める 汗を落としながら 部屋の中にいやらしい音と卑猥な匂いを充満させていく スペラはすごい勢いで自分の性器を扱いている 「あー……!出る、出る……っ!!」 「俺もだ、スペラ。出すぞ?いいか?」 「出して!中に、あっ、ああっ!ああんっ……!」 「くっ、あ……っ」 精を放ち愛を与え合う 何度やっても相手が誰でも 気持ちいいのだけは間違いなかった
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加