1人が本棚に入れています
本棚に追加
青白く光る薄片には、苦悩が刻まれていた。
「おい中村!!」
「は、はい!」
「お前、今期のノルマ達成できてないぞ!何やってるんだ!」
「申しわけありません。」
中村と呼ばれた若い女性は深々と頭を下げた。周りの従業員は、反応する素振りさえ見せずに、デスクに向かってそれぞれの業務を進めている。
「ったく、お前みたいなのがチームの足引っ張ってるんだよ。分かってんのか。女の武器でも何でも使って案件取って来い!バカ野郎!」
「すみませんでした!!頑張ります!!」
黒い断片は、深く深く癒えない傷の色だった。
「・・・ごめん、理絵。俺、言わないかんことがある。」
「・・・何?」
「・・・・・。」
「何よ。言わないかんことなら、言って。それとも、私に言わせるん?」
「・・・俺、好きな人ができた。ごめん。」
「うん。多分、知っとった。」
「あ!あの!!」
理絵は、手で恋人だった男が言おうとしている言葉を制した。
「何も言わんで。多分、相手が誰かも分かっとる・・・。」
「ごめん。本当ごめん。」
「・・・別に謝ることじゃないし。幸せになってね。」
「あ、ありがとう!理絵も、幸せにな!理絵なら、絶対いい人いるから!すぐ彼氏できるって!」
「・・・・・うん。じゃあね。」
「じゃあ、元気でな。」
男を見送ると、理絵は後ろ手にパタンとドアを閉めた。
「・・・っう。ぐ・・。うう。ううわあああ!!!くそ!あのバカ!!ありがとうじゃねえよ。バカ男!!ああああああ!!」
最初のコメントを投稿しよう!