夢の澱

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黄緑の薄片は、夏の日の木漏れ陽が入っていた。  父と母が幼いわが子の手を引いて、ブドウの葉から差し込む光の中を幸せそうに歩いている。 「良かったねー、理絵ちゃん。いっぱいブドウとれたね。」 「うん!いっぱい取れた!でも、全部お父さんに抱っこしてもらったけん。一人で取れんかったな。」 「ハハハ!理絵!!お前を抱っこしてやれるのも、今のうちたい。すぐ大きくなるっちゃけんな。」 「えー本当に?いついつー?」 「いつやろうなー。楽しみやなー。」 「フフフ。ねえほら。小屋が見えてきたよ。休憩して、ブドウ食べよっか。」 「うん!食べるー!!」  幼い子どもは一目散に駆け出して、農園の小屋まで戻ろうとした。 「こら理絵!走ったら危ないでしょ!!」 「お、理絵。まだ元気あるとや。お父さんとかけっこするぞ!」 「わーいわーい!キャハハハ!!」  そして、桃色に光る薄片の中には、初めて見た光が入っていた。 「ビエー――ン。ビエー――ン。」  自分は、温かく大きな腕の中に抱かれている。 「おお、よしよし。良い子ね。ママですよー。」  その大きな腕は、もっと大きな別の腕に支えられていた。 「理津子!良かった。無事に生まれたんやなあ。頑張ってくれて、ありがとうなあ。」 「ううん。あなたも、色々助けてくれてありがとう。でも、ほっとした。赤ちゃんって可愛いわね。」 「ああ。何か俺、感激した。ありがとう、理津子。生まれてきてくれてありがとう、理絵。」
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