1人が本棚に入れています
本棚に追加
そう、私はあの日自ら命を絶とうと轟轟と流れる海流の渦の中に身を投げた。潮の流れが速く、死体が上がるのも難しいとされている場所で、私は嫌気がさしていた全ての世界にお別れを告げようとした。
何で私が生きているのかは分からない。後からお医者さんと警察に聞いた話でも、生きているのは奇跡的だと言われた。それぐらいの場所だった。そして私は、この世界とは違う場所にいた。あの、体中にまとわりつくような重い空気と、鈍く光ったピンク色の空間、そしてシャボン玉の破片のように、その光を屈折させて虹色に煌めくその夢の澱が思い出せる。あれは、何だったんだろう。最後に現れたあの光が言った通り、私を愛してくれる人たちが私をこの世界に連れ戻してくれたのだろうか。だとしたら、今なら少しだけ自分という人間の秘密が分かった気がする。私はという人間はきっと、無限に降り積もる夢と思い出と愛の澱によって出来上がっているんじゃないだろうか。
私、もうちょっと頑張って生きてみようかな。
最初のコメントを投稿しよう!