F(エフ)星の記憶

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aa09298f-c62b-4da3-9bad-c98a8f4da441Chapter1(第一章) ★流れ星  毎年、流星群が到来するシーズンになると親しい友人たちと一緒に決まって信州の山へ足を運び、キャンプ用のテントを張って星々を観望する。  夢に現れたその特異な夜もいつになく無数の星たちが燦々と煌めき、何やら密かに囁いているような気配さえあった。暫くの間、漆黒の宇宙に身も心も包まれ優しい空間の中で癒され浸っていた..その時だった。  烈火の如く強烈な閃光が頭上を真横に突き抜けたかと思えば、未だその軌跡が消えて無くならないうちに火球にも似た凄まじい流星が、八方から流れ始めたのである。  真に星が降るという言葉が相応しいそんな夜だった。一瞬で吸い込まれそうになるような、これまで遭遇したことがない恍惚としたしかも怖いほど美しい光景だった。瞬時にして何色にも色を変えて輝く流星は、しかし次第にその数を増大していった。  不意に一抹の不安が過る。傍らにいた友人の悲鳴に近い叫び声と同時に一直線に降り注いでくる煌く物体が視野に捕えられたその瞬間、身体が一転して硬直するのを感じた。背筋が凍りつき誰かが*「金属の塊だ」と叫んでいるのを耳にしたとき、ハッと我に返り目が覚めた。 (*物体は老朽化し制御が効かなくなった人工衛星)  大量の冷や汗でぐっしょりとなった私の身体は突如氷のように冷たく、陶酔の絶頂から急転直下で暗闇の深い底へ...                                                                            ★ To be continued
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