F(エフ)星の記憶

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Chapter2(第二章)★ルームメート  翌朝は、土砂降りの雨で一日が始まった。モモちゃんは、一足先に外出したようだ。モモちゃんというのはネットのコミュニテイサークルで募集したルームメイト。彼女は、T大教養学部の3年生。総合社会科学科・国際関係論文科の学生で今は、就職活動に余念が無い。  朝帰りの多い私と彼女とのコミュニケーションは、キッチン前のテーブルに置かれたボイスメモという日も少なくない。  私は、遅めの朝食をバケットとカプチーノで済ませると急いでプロダクションへ向かった。「環境エコロジー」という専門誌の出版元ながら、広告企画および編集のプロダクションでもある編集部を覗くと、フリーでイラストレーターをやっているメイメイがいた。  スタッフの誰もが、彼女をメイメイと呼んでいる。本名は八木黎子。一向に仕事が捗らない様子の彼女にその理由を聞くと、新年特大号に綴じ込みでつける小冊子へ未来の環境に優しいエコグッズをイラストで紹介したいのだがなかなか図案として形にならないのだと言う。  新年号といっても年内に出す号と同時進行で纏めていくので、物理的にも精神的にもかなりタイトな仕事である。業界では常識だが、恐怖の年内入稿作業が暮れまで続く。  「校了明けなのに、ご苦労様。」と気の毒げに言ってから、私は彼女の分のコーヒーも一緒に入れた。コーヒーを彼女と自分のデスクに一先ず置き、引出しを半分開けかけて、さてどうしたものか・・・。校了明けで誰もいないはずの編集部だったが、心落ち着かせてゆっくり読める雰囲気でもなさそうだ。  私は、潔く諦めて頭をあれこれ悩ませているメイメイを前に、自然的環境と社会的環境からみた未来の環境エコグッズについて、そしてまた、自分達を取り巻く様々な環境そのものについて想いを巡らせてみた。                           ★ To be continued
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