羽乃編【 二人のその後】

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羽乃編【 二人のその後】

「えっ?!よりもどしちゃったの」 同僚の祐奈が声を上げた。 「うん」 祐奈は呆れた表情で羽乃を見た。 「浮気する男は、またやるよ。今度されたらどうすんの」 「う~ん…その時考える」 祐奈は大きく息を吐いた。 「もうっ、羽乃は人が良すぎ!私だったら絶対許さないけどね。そんな馬鹿な男と良く付き合えるよ」 「ははっ、そうだね。でもさ、その馬鹿で素直なとこが憎めないというか」 「…私は佐伯さんをおすすめするけどね」 祐奈は、窓を背に座る上司に視線を移した。 「バツイチだけど、温和だし優しいし、なんといっても余裕がある。天然の羽乃にはお似合いだと思うんだけどなぁ」 羽乃もつられて佐伯の方を見る。 サラサラの髪が夕日に照されて光っている。 佐伯がふと視線を上げて目が合った。 何?と目が問いかけてくる。 羽乃は笑顔を作って首を振った。 「もー、佐伯さんは他に良い人いるよ、多分」 「いないって言ってたよ。羽乃のこと気に入ってるっぽいし」 ハイハイ、とあしらって羽乃は仕事に集中した。 もしそうだとしても、羽乃には啓太という恋人がいる。他の誰かとどうこうなんて器用なことは出来ない。 「羽乃ちゃん」 佐伯は何故か羽乃をちゃん付けで呼ぶ。 「なんでしょうか」 「来週、新店舗のお手伝い行けないかな?開店前の最終チェック。このシステムは羽乃ちゃん担当だっただろう?向こうの担当者が手間取っているらしくってさ」 新店舗は県外だが往復4時間だから日帰りで行けないこともない。 「良いですよ」 佐伯はホッとした顔で笑った。 「良かった。一泊二日の出張になるけど、俺も同行するから」 羽乃はそれを聞いて内心慌てたが、平静を装って、そうですか、と答えた。
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