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電車から降りてきた羽乃を、ホームで啓太が待ち構えていた。
羽乃は笑顔で走り寄った。
「おかえり」
「ただいま」
羽乃の荷物を肩に掛けて、啓太は羽乃の手を握った。
「スプリングコートは?」
「佐伯主任は先の駅で降りたよ」
「牽制しとこうと思ったのに」
「そんな必要ないよ」
「羽乃」
「ん?」
顔を上げた羽乃に啓太はちゅとキスをした。
羽乃はいきなりの振る舞いに固まった。
こんな人前でキスするなんて、初めてだ。
「な、なにを」
啓太は焦る羽乃の腰を抱く。
「なあ、羽乃のアパートまで我慢できそうにないんだけど?」
「えっ?そんなこと言われても」
「久しぶりに行かねぇ?」
ど、どこに。
啓太は戸惑う羽乃の手を引っ張り、タクシーを停めた。
茫然とする羽乃のワンピースを脱がしながら、啓太は鼻息を荒くしている。
きらびやかな室内を見渡して羽乃は言葉を無くしていた。
連れ込まれたのは駅からタクシーで数分のラブホだった。
羽乃は下着に手をかける啓太の手首を掴んだ。
「ま、待って。私さ、すごく汗かいてて」
啓太はジャケットを脱ぎ捨てて、ネクタイを緩めた。
「じゃあ、一緒に風呂に入ろうぜ」
啓太は透明なガラスに囲まれた一角に視線を向けた。
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