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火色の雪が、降っている。冷たくはない。触ると、ジュッと火傷する。
火色の雪が降っている。地上は灰色。雪が降りつもるたびに火色に燻るけれど、やがて灰色に変わる。もう火傷はしない。触るとサラサラしていて、指先がその色に染まる。
キレイだな、と思った。キラキラしている。けれどそこには、花は咲いていなかった。花が埋もれた。蕾は開くことなく灰色の雪の下。
「えっ火色の雪?!」
君は驚いて、慌てて電話をしてきた。
メールを送ったのだ。思わず。
『火色の雪、キレイ』
窓の外には、ひとつふたつ輝く星と月。水滴ひとつ落ちてこない。それなのに、わたしは火色の雪を見た。
火の粉。と、人は言うだろう。たぶんそうだ。わたしは、火の粉を見た。モクモクと爆発後の残り香だ。
「大丈夫?!」
君は言う。
わたしは笑う。
「うん。大丈夫。大丈夫だけど、大丈夫じゃないかも」
火色の雪は、窓の外に見えたのではない。目の前にある、テレビ画面に見た。見て、キレイだと思った。ゆっくり、ゆっくりまるで星が降るように降る火の粉を。そして、雪みたいだと思った。火色の雪。なんて、本当に降ってきたら、大事件だ。
火色の雪を降るのを見ながら思い出したのは、君のことだった。じんわり火傷している気持ちになった。降る火の粉を見てキレイだと感じながら、君を思い出していた。
きっと君は見てはいないこの光景を、わたしは君の声を聞きながら思い出している。
説明することなく、ただずっと心配する君の声を聞いているわたしは、たぶん少し意地悪だ。胸の中で、火色の雪が降りつもるように燻りながら、君の声が降り積もる。
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