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龍の列車は夜を飛ぶ 11
龍の列車は夜を飛ぶ 11
「あの、夜兎さん……」
「ん?なに?」
「今度は診察じゃなくて……夜兎さんに触っていいかな……」
腕の中から逃がさないまま尋ねると、夜兎さんは俺を振り仰いで小首を傾げた。
「どんな風に?」
良いとも嫌だ、とも表情からは読み取れなかったので、
「こんな風に……」
背後から抱きくるめた夜兎さんの首筋やほっぺたに唇を這わせながら、温かな身体を探る。
「こそばゆっ……」
夜兎さんは首をすくめ、何をされるのかと興味津々で、俺の指先に目を落としていた。
段々と顔が赤くなり、目つきもとろんとしてきてるみたいだ。
薄手の上衣越しに両胸の突起に触れる。
くにくにとこね回すと、
「ん、んんーっ……」
やとさんの唇から声が漏れた。段々と弾力が増すにつれ、
「あ、あん、あ、あ」
夜兎さんの声も甘いものへと変化し、両膝をくっつけて脚をもぞもぞと動かして頼りのない腕を俺の肩口に伸ばしてきた。
「嫌じゃない?気持ちいい?」
耳元に言葉を吹き込むと、夜兎さんはそれだけで、
「し、しゃしょーさん、、今日、いっぱい夜兎に触ってくれるんやね……」
舌ったらずに肩を震わせた。
乳首を弄ばれただけで、
「あ、ああん……」
夜兎さんは俺の肩口を強く握り脚をシーツに突っ張ると、自然と腰が揺れ始めた。
「気持ちいいんだね?」
「ん……」
「ここ好き?」
「ん。すき」
ここ、触られるの弱いんだ。
俺は夜兎さんについて、また新しいことを知ることができた。
執拗に乳首を愛撫するごとに、夜兎さんはあんあんと声をあげて何度も身体を強張らせた。
可愛い吐息がたくさん聞けて、俺の我慢も限界寸前だ。
夜兎さんは瞳を潤ませながら自分の腰を俺の下腹部に擦りつけて、
「?」
ちょっと後ろを振り向いた。
「しゃしょーさん、なんか当たっとるよ……?」
不思議そうに問いかけられ、俺は思わず赤面する。
普段は無邪気なのに、身体をくねらせて乱れる夜兎さんの姿を眼前にして、俺はとっくに自分のモノを勃ちあがらせていた。
俺は観念し、ベルトを緩めると、
「うん、ごめん……夜兎さん、今日は夜兎さんに気持ちよくなってもらうつもりだったんだけど……」
自分のモノを夜兎さんに見せた。
夜兎さんはぽうっとしながらも、少し緊張の色合いを浮かべたので、行為自体は幼さの残る夜兎さんも理解できているみたいだ。
俺は怖がらせないよう優しく後ろから腰を抱え上げ、ぐいと引き寄せた。
西原さんから今の身体を得てからは、子供のように優しく育てられ、そんな経験をしたことはないのだろうが、今の身体を得る前は、または自動人形というものは、戦闘や性の奉仕をさせるために元々は造られたものらしい。
どのようないきさつで昔の身体を失ったのか詳しくは知らないが、以前の辛い記憶があるなら、思い出させたくない。
「怖い?」
一度確認すると、
「う、ううん。夜兎、へいき」
そう言ったけど、その声はぎこちない。
秘所に俺のモノが当たり、俺達の汗ばんだ身体はぴたりと吸い付いた。背後から手を伸ばし、穿きものの裾から、指を挿し入れる。
ついさっき診察しようとして触れたその奥は、温かく濡れていて、夜兎さんは、
「んんっ」
これまで以上に色めいた声を漏らし、挿し入れた俺の指をきゅっと締め付けた。
目の前が弾けたように真っ白になった。
「ここだけで、こんなになっちゃったの?可愛い、夜兎さん可愛いな」
増やした指を抜き差しし、俺のモノが入るようほぐしてやる。
耳に吹き込むように教えてあげると、
「夜兎に入るかな……夜兎、人形やから……入るとええんやけど……」
夜兎さんはさっきと同じように少し不安げだ。
もし怖い記憶があるのなら、忘れさせてやりたい。
以前の誰よりも優しく扱ってやりたい。
腰をあげさせ、とろりとした蜜が溢れ零れそうな箇所へ俺のモノをあてがった。
ぐっと押しあげていくと、肌よりも夜兎さんの中は温度が高い。それを感じると、俺も昂ぶりが一層増していく。
湿った音をさせながら腰を沈めさせていくと、
「や……」
夜兎さんは後ろ手に俺の肩口を握りながらも、身体を離しかけ、
「や、やっぱりこわ、こわい……」
怯えた様を見せた。
「怖い?やっぱりやめる?」
顔を覗き込むと、夜兎さんは浅い息を繰り返し、潤んだ瞳で俺を見詰め返した。
「こ、こわいけどやめたない……」
夜兎さんは俺から手を離し、両の掌で自分の胸を押さえている。
人形は、そこに核という、人や龍でいう心臓があるようで、夜兎さんは胸の動悸を必死で抑えているみたいだった。
俺はその手に自分の片手をそっと重ね、
「落ち着いて、深く息を吸って。身体の力を抜いて……」
今一緒にいるのは俺だということ、怖がらなくていいこと、君を愛しいと思っていることを伝えるように、呼吸と身体の動きを合わせてやる。
そのうち、
「……ん。んっ……」
夜兎さんの身体はまた緩く揺れ始め、心地良い声が唇から零れ始めた。
身体もだけど、身体よりももっと、心で近づきたい。触れ合いたい。
最奥まで入り込ませたものを、できるだけ乱暴でなく突いていく。柔らかな中の、どこが夜兎さんの善いところか、探り探り腰を揺らしていく。
「んあっ、や、あんっ……あん」
夜兎さんは再び快楽が勝りはじめてくれたようだ、俺の腕を握り、俺のモノをきゅきゅ、と締め上げてくる。
「夜兎さん、夜兎さん……」
ここにいるのは俺だよ、君を今愛しているのは俺だよ、と伝えたくて、俺は夜兎さんと絡み合っているあいだ、ずっと声をかけ続けた。
++++++++++
はたと気付くと夜は明けていて、俺達はお互いの身体を抱き締め合って眠っていた。心地良いだるさと共に半身を起こし、窓辺に目をやるとカーテンの隙間から既に明るい光が漏れてきていた。
俺は隣の夜兎さんを見詰めて深くため息をついた。
自分の軽率さに、自責の念が胸を締め付ける。
結局、あれから夜通し夜兎さんを手放すことができなかったのだ。
と、夜兎さんももぞもぞと身動ぎし、薄く目を開けた。
「しゃしょーさん……?あさ……?」
「うん。おはよ」
「おはよ」
柔らかく抱き締めてやる。
夜兎さんも起き上がろうとしたが、身体に力が入らないのか、のろのろと腕をシーツに突っ張ろうとしている。
手を貸して、壁に凭れかけされてやってから、
「夜兎さん、あの……ごめん」
俺は布団の上に正座をし、頭を深く下げた。
「なあに?」
「まだ脚も完全に治ってないのに、いきなりこんなことになって……」
昨夜の、優しくも熱い行為が思い出され、めくるめく幸福感が俺の胸を満たしたけれど、いかんせん性急すぎた。
夜兎さんは怖がったのに。
「なんで診察までで止められなかったんだ俺……夜兎さんは、ゲームとかしたかったのに……」
床に転がっているリュックからゲーム機が顔を覗かせている。
情けないやら恥ずかしいやらで頭を上げられずにいると、俺の膝を夜兎さんは右足でちょん、とつついてきた。
「ちゅーして」
小指の爪の色が変わった足先をちょいちょい、とやられたので、俺はその美しい小指の爪に口付けをする。
ちら、と上目遣いで盗み見ると、夜兎さんはまだ頬が火照ったように赤いまま、嬉しそうに微笑んでいた。
「ゲームは、しゃしょーさんのお部屋に入れてもらう口実やったんやから、ええねん」
声が少し掠れてる。
俺のせいだ。机に置きっぱなしにしていた瓶入りのソーダ水を手渡すと、夜兎さんはこくこくとおいしそうに飲んだ。
「……ちょっと気ぃ抜けとるよ」
ふわっと笑った顔がたまらなく可愛い。
隣に腰を降ろし、俺も口にすると、
「ほんとだ」
一緒に笑った。
するすると顔を近づけて、ソーダ水の味の口付けを交わした。
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