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石塚は手に持っているボトルが炭酸水だというのに ブンブン振り回す。 併せて体も駄々っ子のように揺らす。 それを見て ただ事ではないと クラス中の視線が注目した。 「どうしたの?いっしー?」 「さわがしーぞ おめえ」 けれど当人は 質問へ返事するでなく 半泣き状態で自分の椅子へ向かいながら (まく)し立てる。 「隣の3組!!ちゃっかりバレンタイン楽しんでんの!!   全然 アオハルしてんの!  クラス女子が男子全員にチョコ配ってんの!  なんなんだよー ちょーだりーーー!!」 怒りと言うより 悲しみと言うより そのくやしさ大全開の感情に反応したのは 男子たちだ。 ハチの巣をつついたように便乗が始まる。 「はー? ずりいなあ!」 「なんなんだよ それ!」 「おいおい!なんだああ?!チョコー?」 「リア充撲滅!!」 「バレンタインなんてなくなればいい!!」 あまりの騒ぎように しょーがないなと見守る女子軍。 だけど 男子の誰かが叫んだ最後の一言に 私たちの空気が凍った。 そっと風帆の方へ視線を向ける。 それは女子だけがわかる空気。 だって… 私達だって準備してる。 3組の女子がクラス男子にプレゼントをしたように ここのクラスだって男子のため とっておきのチョコレート計画を立ててるんだ。 なのに バレンタインなんてなくなればいいだと?! 次の瞬間  風帆といつも一緒に行動している詩音(しおん)が 立ち上がろとした。 すると 風帆が詩音の手を掴み そして私のスマホの通知音が鳴った。 正確にはクラスの女子がスマホに目を移す。 『計画は予定通りに』 見えた文面は女子全員の動揺を抑えるには効果充分だった。 さすが 冷静沈着な評議員の仕事は  いつも早く抜け目はない。 風帆の考えた2組チョコレート計画は放課後に決行予定。 今更 つぶすなんてありえない。 やるなら 完璧成功しかない。 ブーブー言ってる男子軍の様子を無視する。 咲也くんも その輪に入っているのが気になるとこだが 我慢した気持ちを 計画成功へのモチベに変えた。  黙々と食べた弁当を片付けて トイレとか済ませた頃に予鈴が鳴り響く。 着席し サブバックから次に使うクリアファイルを取り出そうとした瞬間 ハッとした。 やばい。。 わたし プランBも没案にしてしまったかもしれない。 放課後の約束ができないまま 昼休みが終わった。
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