【12:30】

1/2
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

【12:30】

高校入って初のバレンタイン 初めての手作りチョコ 朝からずっと 2次元でみるアオハルが 学校中でキラキラしてるのかと思ってた。 けど 現実はそうも行かない。 ホームルームが終わってから  淡々と日課表どおりの進行。 なんの変化もなく  あっという間に半日が過ぎた。 お母さんの作ってくれたお弁当をひろげ 各自の昼食時間。 どうやって渡したらいいんだろ。 呪文のように繰り返す。 開いたお弁当箱の中に  小さなトンカツが入ってた。 日曜日の昼間に キッチンを占領し 手作りの壁に悪戦苦闘しながら  チョコを溶かしている娘の様子に 何を思ったのか お弁当作りながら ニヤケてたママを思い出す。 『受験生かよ・・・・。』  と ちょっとツッコみたい。   ちらっと 隣の席の咲也(さくや)くんを見ると 彼は売店の人気商品 ビック焼きそばパンをもぐもぐと頬張っていた。 「それ 何個目?」 「えーと2個かな? もう1個 メンチカツもある」 「売店行くの早かったね」 「コツは授業終わったら すぐ飛び出すことね。俺 購買のプロだから」 美味しそうに食べながら幸せそうに笑った。 わあ めっちゃいい! その笑顔に思わずギュっと目を閉じる。 「どした?」 「急にまぶしくて」 素で その天然笑顔。 自分の好きな人。 つまりチョコを渡したい相手の マスクなしド直球笑顔は心臓を簡単に射貫く。 アドレナリンのせいで  バグってる脳が 今ここで渡した方がいいんじゃない?と とんでもないことをしだしそうになるのを理性で止める。 落ち着け 落ち着いていこ! 今は プランBの下準備が適当! 『プランB:放課後ちょっと話があるんだけど作戦!!』 「ひより そわそわ挙動不審だな」 「え?」 「なんか いつもと雰囲気違うぞ?」 「いやいやそんなことないよ?」 「ふーん?」 怪しげな視線を残しながら手元にあるパンを咀嚼している。 いつも にこにこで 雰囲気が柔らかい。 いつからだろう 気がついたら  この居心地よい彼のそばが大好きで 告白とかしなくても この雰囲気守れるならそれでいいんじゃないかなって 思ったりもした。 だけど 私はやっぱり 彼のことをもっと知りたい。 そんな欲張りな気持ちに気がついた。 キラキラな青春したい! だからバレンタイン がんばるんだ!! と決意した瞬間に 鼓膜がブルブルするような大声と ドカドカっと足音を響かせて 教室前方のドアを開けた石塚が  心底絶望的に叫んだ。 「ちょ!!うそだろーーーー?!3組!!」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!