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ガラッとドアを開いた瞬間だ。 「せーの!」 「Happy Valentine!」 チョコのディスプレイに向けて 両サイドに分かれた女子がそれぞれの手をひらひらさせる。 一瞬 たじろいだ男子の表情。 けど 「うぉーーー!なにこれ!」 「は? まじで?」 「なになに これもらっていいの!」 「バレンタイン!神!」 「きたああああ!」 状況を把握した子から 黒板の方へ笑いながら駆け寄ってくる。 私は手をひらひらさせながら 咲也くんを探した。 彼もよく一緒にいる男子と顔を見合わせ こちらを見て笑ってた。 「2組女子からのプレゼントでーす!!  ひとり2個! 持って行って!」 風帆の声に男子がハートの中からチョコを取っていく。 「メッセージある。すっげー」 「ありがと。」 計画がうまくいった。 休み時間に大騒ぎしていた石塚が風帆に何か話しかけてるのも見えた。 「よかった」 「大成功」 女子たちも男子たちの様子に思わず笑う。 よく見るとまだもらってない人もいて 誰ともなく チョコが手元に届いてない男子へ手渡しを始めた。 咲也くんも まだチョコ取ってない。 そう気づいた時だ。 さらさらボブヘアが定番の水沢さんが  咲也くんにチョコを手渡す瞬間を見てしまった。 あ  しあわせそうな表情(かお)で お礼を言いながら受け取る彼のそばで メッセージを指さすカノジョ。 2人が同時に笑った。 あれ? あの2人 そんなに距離が近かった? 私の知らない咲也くんが 姿を見せた。 朝のドキドキとは違う心臓のドキドキが止まらない。 待って。 まさか自分の好きな人が ほかの子から チョコを受け取る場面を見るなんて… それは 想定外だった。 「はいはーい! それじゃ 終わり! SHR始めるから着席!」 教室の後ろから チョコレート計画を見守ってくれた彩先生の声と 廊下から 他のクラスたちが2組の様子をみて笑う声が聞こえた。
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