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我慢しきれなかった涙をぬぐった時
背後から 私の名を呼ぶ男子の声。
「え?」
声の方へ振り返ると
複合ビルの入り口に
咲也くんが立っていた。
「今 帰り?」
なんて言いながら
私の方に来る私のスキな人に
呆然とする。
「どした?」
「なんで ここにいるの?」
「俺? カラオケの帰り」
「カラオケ?」
「チョコもらえないメンバーのヤケカラオケ」
笑いながら私を見た昨夜くんの笑いが止まる。
「ひより 泣いてた?」
「え?」
「涙出てるぞ?」
「あ」
「チョコ だめだったのか?」
「はあ?!」
「サブバックの中にチョコ持ってただろ?」
「あ!!!」
「ごめん。見えたんだよ!
俺の机側からお前のサブバックの中見えるんだよ」
「はああああ??」
「しょうがないだろ?
お前の右側が俺の左側なんだから」
ちょっと待って!!!
何が起こって急展開??
今
私はなんで咲也くんと話をしてるの?!
「それって個人情報の漏洩だから!!!」
「はあああ??勝手に見えたんだからしょうがないだろ?」
まってまって
ちょっと待って!!!
言いたいことはそんなことじゃない!
そんなことじゃないんだ!
サブバックから取り出すペーパーバック。
シンプルな黒のドット柄のマスキングテープを使って
出来るだけオトナっぽく見えるようにラッピングした。
ほんとは 赤とかピンクとか使いたかったけど
もらった時に 恥ずかしくて受け取ってくれなくなるかもって
心配になったから
何度も何度もラッピングしなおして選んだこのパターン。
中には昨日作った私のチョコが入ってる。
「これ!!!!」
がんばれ!!がんばれ!!!わたし!!!
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