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今日も僕らは昔ながらの抜け道を通り、緑の広場に向かう。
ここにはまだ開発とやらが侵入してきていない。
けやきの木の下で、変わらない眺めにホッとし、二人で芝生に座る。
最近は気温もすっかり低くなり、もう秋というより冬と呼べる時期になった。
短く貴重な日中のひなたぼっこ。
僕は彼女に向かい合うと、オレンジ色の髪を撫で、頬と頬を密着させる。
彼女から伝わる体温。ひなたの匂い。首筋に耳を寄せると聞こえるゴウゴウという血流音。そして心音。
僕はこうやって彼女にくっついて存在を確かめ合うのが大好きだ。
若干、気ままなところがある彼女には僕の存在を目一杯アピールしておかないと。うふふと笑いながら明日にはフラッと消えてしまうような危うさがあるのだ。
「私はアナタを置いて行くところなんてないわ」と笑うけど。
頭の悪い僕には彼女しかいないから。
明日のことなんてわからないし。
毎日こうやって彼女の鼓動を確かめる。噛みしめる。
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