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自分には、緑のどろどろとした液状の飲み物を、ヴォンには、何か粒の入った肉団子を1つやった。どちらも、村の緑の魔女が用意してくれた、ありがたいものである。たったひと口で半日動き回れるというその食料は、この終わりの見えない旅路でとても貴重なものだ。
どこまで歩いても一定の量が同じリズムで降るこの灰色の天気に、もう驚きも感動も、不安さえどこかへ行ってしまった。ただ皮の寝袋に入って、夢に入る直前まで眺め続けるその光景は、変わらない1日のなかで1番美しく、穏やかさを感じる。
寝袋を敷き、もぐった。相棒も背に灰を積もらせて、隣にくっついている。
ヴォンのためにと思ってつくった寝袋は、いくら頑張って伝えようとしても、こちらの思うようには使ってくれなかった。袋の中には入らず、その上で、彼は眠る。
「この中に入れば、灰つもらないよ」
昼も夜も分からないこの旅路で、何度いったか分からないこの言葉。猟犬には伝わらなかった。
いつになったら夜空を見ることができるのだろうか。このまま歩き続ければ、この灰の雲のない空の下に辿り着けるのだろうか。寝袋に入るたびそう考える。考えて考えて、灰の降る前の、豊かな草原の夢を見る。
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