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1.スカナンビア症候群
まず最初に記しておこう。これは俺四ノ宮高樹と彼女宮城優衣との数年間の契約の話だ。
それは桜の咲く四月初頭の入学式の後のオリエンテーションの日だった一緒に進学した友人がいない俺の休み時間の相棒は専らSF物の文庫本だった。しかし最近は隣の席の同級生宮城優衣の方へ視線が泳いでいる、彼女も俺と同じように一緒にこの学校に進学した
友人もいないようだった、いや、もしかしたら友人すらいないかもしれない。けれどもそんなことはお構いなしに俺と同じように誰とも話さず薄い空色のブックカバーをかけた文庫本を読んでいた。ちらりと見る限りそれは同年代の女子が読むようなラブストーリーではなかったのを見て少しほっとした自分がいた。個人的にも興味があるがそれ以上に俺は彼女の持つ肘の位置まで伸びている長い黒髪を始めとするどこか少し浮世離れした容姿に心を奪われた。放課後教室に忘れていた課題を取りに下校時刻ギリギリ教室に戻ってきた俺は二つの意味で急に心臓が痛くなった。一つ目は俺の机に置いてある白い封筒のことだったその封筒は今の全世界の十人に一人が発症するスカナンジビア症候群の発症者に送られる物だった。スカナンジビア症候群はその病名の通り最初にスカナンジビア半島で最初の発症が確認された病で発症すると発症した三年後に全身の筋肉が止まり死に至る病だ。ただし発症の一か月前にその兆候が出るという。そして発症時に急に心臓が痛くなるのがその証拠でもある。
三月の健康診断でついに引っかかったんだな。そのことに関しては半ば諦めていた。
そして、もう一つの痛みはその封筒を宮城見ていたことだった。そして宮城は少し寂しげに
「死ぬのは怖くないの?」
と言ったそれに対して俺は
「別に怖くはない、けど…」
言葉が濁った瞬間を宮城は見逃さなかった。そして彼女は
「じゃあ君が死んでしまうまで君の彼女になってあげる。」
と言って急に俺のネクタイを引きこう言った
「正真正銘誓い…いや契約のキスよ。」
そう言われて磁石でも近づけたかのように彼女と俺の唇が触れた。その間はたった一秒未満だった。けれどそれでも多分同年代の男子ならほとんどが心を奪われていただろう。もちろん俺もその一人だった。こうして彼女宮城優衣との半ば強制的な交際が始まった。
2.ゲリラ豪雨と屋根付きバス停で見る夢は
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