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127.ずっと一緒、会いに行くよ
「うわぁ! やっぱりシェンの上が最高」
背に乗せたエリュが興奮して叫ぶ。一気に落下したり、上昇したり。興奮した彼女の声に、後ろに乗ったリンカも大きく声を上げて笑う。
ナイジェルは青褪めて声も出ないらしい。女性二人の方が肝が据わっていた。蛇神の背に乗って移動するのも、いい加減慣れた。それほどに何度も出かけている。
「湖に着くよ」
言葉通り、足元に水の反射が見えた。光る水面へ下降すると、ナイジェルが悲鳴をあげた。
「うわっ、死ぬ! 無理だ」
「死なないよ、僕が蘇らせてやるさ」
神様らしいジョークを飛ばし、湖のすぐ脇に着陸した。蛇神の長細い体がゆるりと横たわる。すっと人型に戻ったシェンは、10歳前後の少女姿だった。
同じように歳を重ねたエリュが機嫌よく笑う。14歳ほどの年齢に見えるリンカは妖精族なので成長がゆっくりだ。そんな中、一番外見に変化があったのはナイジェルだろう。すでに成人年齢を超えている。王太子ではないので、国に戻らず友好の証としてゲヘナで役職に就いた。
「ったく、乱暴だぞ。シェン」
文句を言いながら、武官の制服を整える。近衛騎士を希望したが、魔法が使えない人族には務まらなかった。そこでベリアルとリリンが相談し、新たな役職を作ったのだ。皇帝陛下の専属騎士となった。
専用の制服は現在注文したばかり。ひとまず、一般的な武官の制服を着用していた。コネではなく実力でテストもパスした実力者なので、シェン達も納得している。以前と同じ青宮殿の部屋に住んでいた。
「あと何年、ゲヘナにいられるかな」
湖の水に足を浸しながら、リンカが心配そうに呟く。すると、隣に座りブーツを脱いだナイジェルが、からりと笑い飛ばした。
「王位継承権は低いんだろ? 俺みたいに返しちゃえばいいじゃん」
「人族と違って、妖精族の王族は少ないから。難しいと思うよ」
シェンが肩を竦めて擁護する。エリュはきょとんとした顔の後、無邪気に希望を口にした。
「ずっと一緒がいい。でも無理なら、会いにいくよ。遠くてもシェンに乗ったらすぐだもの」
光を浴びると虹色に輝く銀髪をかき上げ、エリュはリンカの隣に腰掛けた。当然のように、さらに隣へシェンが続く。4人で並んで湖に足を浸し、しばらく沈黙が落ちた。小鳥の声や葉擦れの音が満ちる森の湖で、派手な水音が響く。
「えいっ!」
「え? 泳ぐのかよ」
服のまま飛び込んだリンカに驚きながら、制服は脱いで畳むナイジェルが追いかけた。なんだかんだ付き合いがいいのは、ナイジェルの良いところだ。笑いながら見守った二人は顔を見合わせ、目配せし合う。
昔は双子のように似た姿だった二人も、今ではさほど似ていない。よくて姉妹だろうか。黒髪をさっと結んだシェンが上着を置いて水に入った。
「うわっ、冷たい」
「そう? 平気だよ」
エリュも湖にゆっくりと入り、途中でじゃぽんと沈む。慌てたシェンが潜ろうとしたところ、ふわりと浮いてきて笑った。突然深くなった場所で足を踏み外したらしい。なんともないと聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。
「こんなにゆっくりするの、久しぶりだね」
「うん。忙しかったから」
十数回目の建国祭が無事に終わり、これから暑い季節が訪れる。まだ肌寒い季節に湖に入った4人は、水から上がると青紫の唇を笑い合い、火を焚いて暖を取った。帰ってから叱られたのは、言うまでもない。
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※明日、完結予定です
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