【第一話】炸裂弾

1/17
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

【第一話】炸裂弾

 ここは緑豊かな不思議の国。広場では小鳥が楽しそうに(さえず)り、行き交う人々からは笑顔が窺える。そんな平和な国にある唯一の道具屋は、まだ幼さの残る十代半ばの兄妹が営んでいた。 「お兄ちゃん、この綺麗な鎧はどこに置く?」 「そいつは西で手に入れた目玉商品だ。入口に飾っておいてくれ。守備力は大したこと無いけど、宝石が散りばめられて目立つから王宮の金持ち兵士に売れる」 「確かに目立つね。でも、本当に売れるの? それに、守備力が無いって鎧の意味が……」 「魔物と戦ったことすらないお坊ちゃん兵士は見た目だけでも強そうにしたがる。この派手な鎧を一目見れば飛びつくはずだ。俺は正義の味方じゃなくて商売人だからな。儲ける為なら何だってやるさ」  道具の手入れをしながら偉そうに講釈を垂れるのは兄のハッタ。それを横目に妹のヘイヤが武器や道具を陳列していく。一仕事終えてティータイムの準備をしていると、勢いよく店の扉が開いた。 「いらっしゃ……げっ、アリス!?」  ハッタの視線の先にはドレス姿の美しい少女が仁王立ちしている。 「なによ、人の顔を見て驚くなんて失礼ね」 「王女様が道具屋に用なんて無いだろ? 冷やかしなら帰ってくれ」 「冷やかしじゃないわ。私は……あら、この悪趣味な鎧は何なの? 入口に置くなんて邪魔よ」  どうやらこの国の王女様らしい。その王女が鎧を激しく蹴り飛ばす。吹き飛んだ鎧は壁に激突し、爆音を響かせ粉々に砕け散った。 「あーーーっ!? おっ、おま、なっ……何をして……」 「これでスッキリしたわね。礼には及ばないわ」 「……」  涙目で鎧の残骸を拾うハッタ。アリスが哀愁漂う背中を一瞥もせずカウンターに座ると、店の奥からヘイヤが紅茶を運んできた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!