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1章 2
人生で二度目の異世界転移をしたハヤトは、山の中に立っていた。
「前回は山の中。今回もか」
周囲を見渡すと、生態系は地球と似ているようだ。
「酸素が少ない世界かもと思ったが、酸素濃度は地球と同じくらいか」
何かの生き物たちに囲まれている事に気づいたハヤト。
どうやら、何かの野生動物のテリトリー内に異世界転移したようだ。
殺気の包囲網がじわじわと狭くなってくる。
「俺を殺るつもりか」
ハヤトは空間倉庫から直径10ミリの鉄玉を20個取り出した。
鉄玉を左手に。右手の指で鉄玉を弾き出す。
弾き出された鉄玉は、時速1000キロで野生動物たちの頭に致命傷を与えた。
「さて、山を下りるか」
ハヤトは野宿なんてしたくない。静かな部屋でフカフカの布団で寝たいのだ。
しばらく歩くと、遠目に第1異世界人を発見した。
どうやら農民らしい。着ている服は粗末に見える。
ハヤトは空間倉庫から似ている服を取り出して着替えた。
地面をゴロゴロしたり、藪で引っかけたりして服をボロくする。
そして、農民らしき人に近づいて声をかけた。
「すみません、こんにちは」
「アグワ?」
「日本語は分かりませんか?」
「ギマン、ガレクタン?」
「失礼しました」
「ゴグマ」
(日本語は通じないか)
農民みたいな人から少し離れて、農民みたいな人をそれとなく観察するハヤト。
(地球の黄色人種と似ているな)
ここ、もしかして地球の中国大陸奥地なのか? とも思うハヤト。
しかし、今は昼間のようだ。ハヤトが異世界転移したとき、日本は深夜0時だった。
中国奥地のほうが時差は遅いので、ここが中国奥地なら、まだ夜のはず。
(おそらくは、異世界だろうな。日本もここも、俺と見た目が同じような人種だが。それが異世界転移の法則なのか。それなら言葉も同じにしてくれよな。言葉を覚えるのは面倒だ)
農民みたいな人はハヤトを無視して農作業をしている。
(しかし、農民にしては筋肉モリモリだ。いや、農民だから筋肉モリモリなのか? 俺は身長190センチなんだが、あの農民は2メートル以上あったな)
回りを見渡すと家のような建物がちらほらとあり、その建物の近くで農作業をしている人たちがいる。
近くの建物から女性が出てきて、ハヤトが声をかけた農作業をしている人に何かを言った。
農作業をしていた人がハヤトに向かって、「こっちに来い」みたいな仕草を。
「俺?」
自分を指差すハヤト。
うなずく筋肉モリモリ農民。
(何だ?)
ハヤトは農民の近くへ行った。
「ついて来い」みたいな仕草をする筋肉モリモリ農民。
ハヤトは素直について行った。
家のような建物の前で女性と何かを話す農民。
「入れ」「手を洗え」「そこに座れ」みたいなジェスチャーをされたので、素直に従うハヤト。
若い女性がハヤトの前に料理を出してきた。
(ここは料理屋なのか? いや、そんな感じはしないし、俺はこの国の通貨なんて持ってないぞ)
「要らない」とジェスチャーをするハヤト。
「心配するな。毒は入ってない」とジェスチャーする農民。
「金が無いので」とジェスチャーするハヤト。
「金? そんなの要らない」とジェスチャーする農民。
「もしかして、おっさんのおごり?」とジェスチャーするハヤト。
「ここは俺の家だ」とジェスチャーする農民。
「なるほど」とジェスチャーするハヤト。
料理をよくよく見てみるハヤト。
(まあ、俺を毒殺する理由は無いだろうし、俺の身体は毒なんか効かないからな)
せっかくなので、ハヤトは食事をご馳走になることにした。
野菜てんこ盛りの料理だ。
一口食べたハヤト。
「美味い」
薄味だが、野菜が美味かった。
「美味いだろ」とジェスチャーする農民。
「美味い」とジェスチャーするハヤト。
(まあ、日本で食べてた料理のほうが美味いけどな)
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