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「君は何もわからないんだね、瑞穗」
「はい、わかりません」
桜は満足げに笑う。
「素直なのは良いことだ。」
ぽたり、と桜の頬に垂れた血を親指で拭うと桜は瑞穗の頭を己の肩に引き寄せた。
少し考えるように瑞穗の髪に顔を埋め、とんとん、と二度彼の背中を叩く。
考えがまとまったのか叩くのを止めると桜はねぇ、と瑞穗の髪をすいた。
「君はどうして殺し屋になったの」
瑞穗はその問いにゆっくりと顔を上げる。
灰褐色の瞳を見つめ、答えかねる、とでもいうように口をつぐんだ。
「それも、わからない?」
桜の嘲笑に瑞穗は否、と黙って首を振る。
まるで泣くように、血が飛び散る。
そうして少し考えるように視線をそらすとゆっくりと、口を開けた。
桜にはそれが震えているかのように見え、思わずぎゅっと瑞穗の手のひらを握る。
「知りたかったんです。」
言葉を区切った瑞穗に何を、と桜は問う。
感情のないこの少年の言葉に耳をすまそうと、黙って微笑を浮かべる。
瑞穗は桜の顔を穴が開くほどじっと見るとしばらくして言った。
「死にたい、を知りたかったんです。」
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