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あっ、残ってた!
喜びに頬を綻ばせてきょろきょろと周りに人が居ないことを確認してからゴミ箱に向かって小走りに駆け寄ると、ゴソゴソと目当ての物を手に取って用意していたジップロックに手早く保存する。
透明な袋の中に密閉された使用済みストローを彷彿の笑みを浮かべて眺めながら今日はいい一日になるなって心の中で舞い上がる。
鞄に中身入りの袋をしまってからそのまま帰路に着いた。
その途中、廊下の窓から彼が何処かに歩いていくのが見えて思わずスマホのカメラのシャッターを切る。
端正な横顔がしっかりと映された画面を見つめて、へへって自分で聞いても気持ち悪いような声を出す。
「今日はめちゃくちゃついてるなあ」
ストローも写真も手に入れることが出来るなんて明日は槍でも降るんじゃないかってルンルン気分になりながらまた廊下を進んでいく。
進んでいると人だかりができているのに気づいてそれを避けるように隅の方に寄る。
人だかりの横を通る時にフワってΩ特有の匂いがして思わず鼻を抑える。Ωの子が発情してしまったみたいでβの先生が駆け足で人だかりのところまでかけてくるのが確認できた。
「…うっ…」
競り上がってきた吐き気を抑えるように足早にそこを立ち去るとトイレに駆け込んで出そうになっていた嘔吐物をべしゃべしゃと吐き出した。
いいことがあると嫌なことも勿論起きる。
そうやって人生というのはバランスを保たれていると身をもって実感する。
「…あー…早く帰りたい。」
鏡に映る平凡な自分の顔から垂れる嘔吐物を見て小さくボヤいた。
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