序 あなたのきおく

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序 あなたのきおく

 ゆら、ゆらり。  ゆらゆら、ゆらり。  耳元には、今日も変わらず「あなた」が揺れている。  緑濃く夏が匂う、蝉時雨の昼時でも。  色なき風が渡る、気怠い夕暮れにも。  冬将軍が幅をきかす、真白い霜の降りた朝にも。  風の強い今日みたいな、春の日の午後も。
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