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その友人の容赦ない言葉に、私はぐうの音も出なかった。というか、私もそのとおりだと、心の片隅では思わざるをえない。あの日、私は、彼女の熱意に押されるように、ふたりで展示をやろう、というさやかの言葉に思わず頷いてしまったのだけれど、果たして、私とさやかの作品などが、展示に値するようなものなのか、私はいまだ、確信が持てていなかったのだ。
その不安はさやかも感じていたのだろう。だが、彼女は彼女なりに思案して、なるべく敷居の低そうな場所、そして通りがかりの客も多そうな観光地にターゲットを絞って、いくつかの会場候補を私に示して見せたのだ。私は、改めてさやかの本気を見せつけられた気がして、うへえ、と思わず呻いてしまった。
そして今日は、さやかに引っ張られるように、その港町にて、目星を付けた貸しスペースやらカフェギャラリーを巡っているわけだが――
結果は惨憺たるものであった。
まず、1、2軒目は貸しスペース。観光地とあって、私たちが手が届くような会場費ではなかった。私たちは1週間くらいの会期を考えていたが、1週間のレンタル費用は双方とも10万円近く。これでは全く手が出ない。
次いで、3、4軒目はカフェギャラリー。値段は手頃だったものの、イラストレーションなどの平面作品ならともかく、ハンドメイド作品と詩の展示なんて聞いたことがない、と一笑に付されてしまう有り様だった。
そんなわけで、私たちは憮然としながら、夏休みも近い港町の路地をとぼとぼと歩いている。額から汗が噴き出す。さやかがそれをハンカチで拭いながら、ぽつり、と呟いた。
「やっぱり、場所が悪かったかな……」
「……場所というより、やっぱり、展示の内容に難があるんじゃ……」
そのさやかの言葉に、私の口からは、つい、本音がぽろり、と漏れる。だがさやかは、そんな半ば諦め気味の私の顔を、ぐっ、と真っ向から見据えると首を激しく横に振りながらこう言った。
「嫌だ。私、朱莉ちゃんと一緒に、なにかすること、諦めたくない。それに私、もう展示するアクセサリー、作り始めちゃっているし」
「さやかちゃん。とは、言っても、場所がないんじゃ。どうにもこうにも」
「そりゃ、そうだけど……」
途端に項垂れるさやかをなだめすかすように、私は言葉を継ぐ。
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