6 私たちの銀河

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 だけど、たしかなのは、私がおそらくその時分の精一杯の力をもって、これらの詩を綴ったのであろうということ。そして今、図らずも、その時の私が書いた詩が、今の自分の生活を、突き動かし、実りのあるものにしようとしている、という事実。  それに思い当たるごとに、私は、柄にもなく、自分の人生の意味、などに思いを馳せてしまう。そんなこと、今まで考えたことすら、なかったのに。   そして私は、思いに耽るごとに、自分がいったい、何を目指して生きているのかと、改めて考え込まずにはいられなかった。学生のころは、なんとか目指す大学に、そして希望の企業に滑り込めればなんとかなる、という考えしか持てなかったし、そのあとは、幸せな結婚をして、子どもを産んで、というように連綿と未来は続いていくのだ、としか考えていなかった。  だが、思わぬことに、私は、その当然あるべき道と思っていたルートから放り出され、ひとりでこの海辺の町に辿り着き、そして、今、なぜか、さやかと共に、展示の準備などをしている。まったくもって、一年前は思いも付かなかった現実に、自分は生きている。いや、ここに至っても、前夫から受けた傷は、未だにじりじりと心を悩ましてはいいる。だが、ただ、悲嘆にくれるばかりだった数ヶ月前とは違って、今はこの現状に心躍るものさえ感じている自分がいるのだ。これはどういうことだろう。そして、私のこの先には、何が待ち構えているのだろう。    ――いや、私は、私に、どうなってほしいんだろう。  幸いなことにwebライターの仕事は、途切れずに受注できている。だけど、絶え間ないメールとオンライン会議のやりとりの隙間、私はその仕事に、なにか違和感を感じずにはいられなくなっていた。延々と続く、見たことも無い商品のために、クライアントが望むとおりの文章を書く仕事。それでお金が貰えるのなら、文句を言う筋はないのかもしれない。だけど、次第に心を占めていく、これはなにかが違う、という感覚。私の心は、日に日に、その疼きに対して敏感になっていくばかりだった。
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