7 ふたり展開催

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 私たちの展示をめがけて、ぽつりぽつりと客がやってきたのは、3日目からだった。どうやら初日に来てくれた人が、これまた近所にあるデイケア施設に通所していて、そこで私たちの展示のことを喋ったらしい。そこのヘルパーさん達が興味を持って、訪ねてきてくれたのだ。 「へえー、なんだかよく分からないけど、面白いねえ」  ヘルパーさん達はギャラリー内を闊歩しながら、ピクチャーレールに吊られた私の詩を音読したり、そこに添えられたさやかのアクセサリーを手に取ったりと、それはそれは賑やかに展示を見ていった。そして、さやかの作ったブローチが二点、バレッタが一点、売れた。さやかは意気込んでそれらをきれいにラッピングし、手渡す。私はその横で、なんとか岩尾に手渡すDMの印刷費が出せるくらいの売上が出たことに、安堵の溜息を漏らしていた。  その後には、さやかの両親が来た。 「あなたが三島さん? さやかから話は良く聞いています。ほんと、この度は、この子の道楽に付き合って下さって、ありがとうございます」 「道楽なんかじゃないですよ。さやかさんのアクセサリーは本当に素晴らしいです。私の方こそ、こんな貴重な体験をさせてもらって、感謝しています」  頭を下げてそう言うさやかの両親に、私はつい語気を強めてそう反論してしまったが、それは心からの本音だった。さやかの両親は、ギャラリー内を一周すると長居もせず立ち去っていったが、帰りがけに、気を遣ってくれたのか、私の詩集を一冊買い求めていった。それが私の初売上だったのだが、喜んで良いのか悪いのか、ちょっと複雑な思いで私はその後ろ姿を見送る。すると、さやかが私に、そっ、と囁いた。 「ありがとう。朱莉ちゃん。私のアクセサリーのこと、ちゃんと、道楽じゃない、って言ってくれて」 「だって、道楽なんかじゃない、って、私、良く知ってるもの」  そう答えた私を、さやかはやわらかな微笑みで見つめ返した。 「本当にありがとう。私、朱莉ちゃんがそう言ってくれただけで、この展示、やって良かったと思う」
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