7 ふたり展開催

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 そして念願の週末を迎えた今日、さやかの出したDMが功を奏して、ギャラリーを開けるや否や、さやかの知り合いが大挙してやって来た。 「シトロン工房さん! マルシェ出なくなっちゃったから心配していたんですよ!」  ことに、そう口にしながらギャラリーに入ってくるさやかの顧客は多く、彼女らは、久しぶりに手にするさやかの新作アクセサリーにはしゃぎ声を上げている。また、マルシェに出ていた作家の姿もちらほら見ることが出来、開催4日目にして、ようやくギャラリーの中は人が満ちた。次から次にやってくる顔見知りの客の対応に、さやかはてんてこ舞いだ。  16時過ぎ、やっと人が途切れると、さやかは私が座っているソファーにやってきた。そして私の横に座り込むと、私の手元を覗き込んで言う。 「朱莉ちゃん、売上の集計してくれてたんだ。ありがとう。私、全然、そこまで手が回らなくて」 「ううん、さやかちゃん目当てでやってくるお客さんばかりなんだから、せめてそのくらいやらないと。すごいね。彗星のブローチと、銀河のピアス、もう売切れだよ。あと、流星のイヤリングも、あとひとつ」 「そうなんだ! でも、朱莉ちゃんの詩集も6冊も売れたよ!」  私は苦笑した。 「でも、みんな、さやかちゃんのお客さんが、義理で買ってくれてたようなもんだよ」 「そんなことないよ。みんな、朱莉ちゃんの詩、いいね、まさにコラボレーションだね、って言ってくれてるよ」  即座にさやかが私に言い返す。その時の私の顔は、余程、自嘲気味だったのか、さやかにしてはその語気は強めだった。 「そうかな」 「そうだよ、だって、これは私だけの展示じゃないんだもの。朱莉ちゃんがいなきゃ、この展示のなにひとつも、産まれていないんだから」 「だと、良いんだけど」 「だと、じゃないよ。朱莉ちゃん」  その時のさやかの声には、わずかながら、私への苛立ちが籠もっていたように思えて、私は思わずさやかの顔を見返す。  と、そのとき、ギャラリーの扉が、ぎいっ、と音を立てて、開いた。私たちの視線は即座にそちらに飛び、そして一瞬の後、私は息をのんだ。
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