土を食べる女

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 それは、随分と言葉足らずで、説明も不十分だけれども、必ず書く、といった。  書いて何か意味があるの? と僕は聞いた。  彼女は「知らない」といった。 「ただ、あなたの中に私がいることを、認識するためなのかもしれない」そう、続けた。 「土を食べてみて」彼女はそういい、僕は土を口に含んだ。少し、口を動かしてみたけれど、飲み込むことはできなかった。手のひらの上に吐きだして、舌で口の中に残った土をあさった。  はははと、彼女は笑った。  子どもが生まれたあとに思ったことがある。  子どもが土をいじっているときに、よく思う。  足を滑らさなかったら、僕は、彼女のことを”知らなかった”ということだ。
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