土を食べる女

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 ふとしたきっかけで、僕は山を登ろうと思い、ふとした禍で、足を滑らし、ふとした運命で、川に流され、ふとしたことで、彼女に助けられたのだ。  もちろん出会った当初は、彼女の置かれた状況や力のことなんて知らなかったし、これからのことも知る由もなかった。彼女が土を食べていることも、知らなかった。  だけど、僕は彼女と出会い、彼女も僕とであったのだ。  そして彼女は、土を食べなくなった。  土を食べなくなった彼女は、僕にさまざまなことを要求しだした。  豆腐が食べたいとか、牛乳が飲みたいとか、そんなところだ。  毛布が欲しいとか、火を灯して、ということまであった。  納豆のことについても議論したりもした。  タレをかけてからかき混ぜるのか、かき混ぜてからタレをかけるのかとか、そういうことだ。  彼女は、どんな風にアレンジしてもいいけれど、必ず108回かき混ぜるということだけは守っているらしかった。そして実際、そうだった。彼女は必ず、納豆を108回かき混ぜていた。 「いつかあなたは、私のことをブログで書く事になる」  と、彼女は言った。
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