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「実、りんごあげる食べて?」
「えっ?何処かであった?……以前、接客したかな?」
困惑する実はミコトから赤いりんごを受け取る
「毒りんご?じゃないよね?」
不信に思って真琴が言う
「実なら大丈夫だよ、今、食べて」
「う、うん」
不思議そうに実は赤いりんごを食べ始めた、別に何も起こらない食べきった。残った芯を受け取るミコト
優しい穏やかな笑顔になるミコト
「実、1週間後にまた来る」
「ごちそうさま。えっ、ああ、あの名前は?」
「ミコト」
そう言って立ち去るミコトの背中を見つめる
ホスト3人
「なんだ?あれ?」
白いスーツのホスト晃
「実のファンか?」
グレーのホスト真琴
「……あの笑顔……以前、何処かであった……
かな?……みこと、どんな漢字?」
思い出せない実だった。
歌舞伎町一番街の通り
『こちら新宿警察署及び歌舞伎町振興組合です』
男性のアナウンスと女性のアナウンスが
夜だけ流れる。
行き交う人々の多さ、まだまだ夜は深まる
ホストクラブ『アンジュ』フランス語で天使
今時のクラブは店内が明るい、きらびやかな装飾はなく下半分は薄い紫色の壁紙と柱、上半分は白い壁紙、黄緑色のソファーに薄い木製で栗色の四角いテーブル
BGMはホストによるピアノ演奏
数人のホストがピアノ弾ける
黒髪ロングヘアーで赤いカーディガン、白い襟シャツ、黒のGパン、赤いハイヒール、ソファーにはグレーのダウンジャケット
ルビーのピアス、ネイルはしてない爪は深爪にならない程度に綺麗に切ってある、そしてピンクの口紅、ナチュラルメイク、上品な眉毛の女性、月影華恋(つきかげかれん)
職業は作家、一見ペンネームに思えるが本名
だという、年齢は30歳で独身
「えっ?子供時代ですか?
僕のより華恋さんの子供時代、可愛かっただろうな」
実の左側には華恋、今夜の常連客
毎週末に来店するほど実のファンでお金持ち
「もちろん、可愛かったわよ。蝶よ華よと育ったわよ」
「実くん同世代でしょ?教えてよ?」
「えっ、えっと……俺は施設で育ったから親いないんだ。正確には母が亡くなる前に施設に預けられたんだけどね」
真顔になる華恋、困り顔の実
「面白い話ないよ」
「……お母さんとの思い出とかないの?」
ひと口、シャンパンを飲む実は重い口を開く
明るい話題にしなくてはと
「母が手紙残してて『実ある人生を、いろんな経験積んで実を付けて、実って名前付けたんだ』ってさ」
「愛されてるのね」
心が暖かくなり優しい笑顔になる華恋
「うん」
グラスにシャンパンを注ぐ実、乾杯して華恋と実は新しいシャンパンをひと口飲んだ。
「手紙あるなら写真とか無いの?」
「高校卒業してボロアパートに住んでたんだけど、火事でね皆、燃えたんだ」
悲しそうな顔でうつ向く実
実の頭を抱き寄せる華恋
「それはかなりショックね、私が時々、ママになってあげようか?」
「えっ!?……うーん」
「嫌なの?」
「対等でいたい」
「クスッ、そうね。スイーツ頼むわね」
メニュー表を手に取る華恋
翌朝7時過ぎ、実は西新宿にあるタワマンに入っていく、店のオーナー男性と暮らしている身元保証人もオーナーだ。
部屋に入りキッチンへ、ティーパックのカモミールティーを入れてポットからお湯を注ぐ、スティックシュガーを3本入れて混ぜる。30畳のリビング、ダイニングキッチン
ブルーのソファーに座りメールチェック
『仕事お疲れさま』『おはよう。ありがとう』『仕事行ってきます』『気をつけて行ってらっしゃい』
毎朝、数十人から届くメールに返事
寝るのは朝10時
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