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『わ、ワシが見えるんか?』
しょぼくれた目を目一杯開いて、相手をもっとよく見ようとする。妖精というより小さな仏様のような出で立ちをしたその二人は、糸みたいな目でワシを見てきた。
「時間がありません。私達のことは仏の使者とでも思って下さい。」
「あなたはやらねばならぬ事があります。」
二人で交互に話しとるが、声色から察するに片方は女性、もう片方は男性のような気がする。
死んだらみんなこうなるんじゃろか?実は死んだら三途の川を渡る前に、みんな自分の葬式に出席して、こうして小さな仏の使いと話すことになっとるんかもしれん。
ワシは「はぁ…」と小さく首を傾げた。
『ワシは何をすればいいんです?』
小さな仏の使いはふわふわと漂ったまま、平然と恐ろしいことを言い始めた。
「火葬までにあなたと家族との“初めて”を見せてください。」
「それができなければ地獄行きです。」
地獄行き!?
『待ってくれ!ちょっと状況がよく分からん、地獄行き?家族との初めて?初めてって、もっと具体的にっ、え、地獄行き??』
混乱して話があっちこっちに飛ぶワシ。小さな仏の使いは淡々と返答した。
「それを考えるのは貴方の役目。」
「我らをそれを見て判断するのみ。」
「さあ、火葬まで残り数時間、」
「家族との初めてを我らに見せるのです。」
なんという無理難題。
ワシはもう幽体で、家族に話しかけることも触れることもできん。そんな状態で初めてを見せろだなんて無理に決まっとる。
それなのに、それができないと地獄行き…!
地獄はどんなところだっけ、とちょっと考えて身震いした。確かにワシは何かで素晴らしい結果を残したわけでもないし、とても平凡な人間じゃった。その上、介護で迷惑をかけまくって、こんな人間は地獄に落としてしまおうと閻魔様が考えるのも無理ないかもしれない。
だけど最後にこんな課題をださんでもええじゃないか…!
『仏の使いさん、あの、』
「我らは何もお話ししません。」
「ご自分で考えるのです。」
粛々と返事をする仏の使い。みんな死んだらこんな無理難題をつきつけられとるんか!?
どうしよう…!
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