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『終わったんだね』
手の中の砕星銃に視線を落とすと、ランプが白く点滅していた。本体の活動停止が確認されたため、プログラムの初期化が始まったのだ。
『また一緒に戦えて嬉しかったよ。さよならレグルス。元気で長生きしてね』
「……じゃあな、ポンコツ」
『もう! 最期くらいは名前で呼んでよね』
この一晩ですっかりお馴染みになってしまったやり取りに、二人して吹き出した。φはひとしきり笑うと、満ち足りた声で言った。
『大好きだよ。これからもずっと』
それが最後の言葉だった。ランプが消え、空っぽになった砕星銃を、レグルスは静かに見下ろした。
「お前がいない世界で、どうやって元気で生きてけって言うんだよ」
そうポツリと呟くと、座って銃口を自身の頭に向け、引き金に靴の先を引っ掛けた。後を追うのは、ファイを殺すと決めた時から描いていた結末だった。
しかし、いくら強く踏み込んでも、弾丸は打ち出されない。その原因に思い当たったレグルスは、思い切り地団駄を踏んで喚いた。
「あの馬鹿! くそ! ポンコツ! 何が、ちょっと歪んだけど平気、だ!」
φの銃身は、ファイの斬撃を受けた衝撃で歪み、止めの一撃を最後に完全に詰ってしまっていた。レグルスは腰に携えていた予備のリボルバー式砕星銃に手を伸ばしかけ、止めた。
「絶対に僕に殺されないで、か……」
きっとファイには、自分の考えなど全てお見通しだったのだろう。優しくて残酷で強引な友は、レグルスがその裾を追うことを決して許さず、最初で最後の嘘をもってして阻んだのだ。
気が付くと、頬に温かい雫が流れていた。拭おうとした手が防護マスクに遮られて、レグルスは苦笑する。歪な心中願望はいつの間にか消え失せ、この先ずっと抱えていくのであろう悲しみと喪失感が、心の中で穏やかに根を下ろした。レグルスはφの銃身をそっと撫でると、相棒の眠る池の中へと沈めた。
いつか世界が終わるとき、もう一度ここへ戻ってこよう。かつて海の底だったこの場所で、二つの天の川をともに見上げよう。それまでは……。
「おやすみ、ファイ」
厚い雲の向こう側で、朝日が登り始める。金色に輝く太陽に背を向けて、欠けた心を引きずって。星狩りは、独りぼっちの今日を歩き始めた。
『星狩りは独り征く』―了―
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