雪解け

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 雪国の冬の夜は明るい。積もった雪が街燈や家から漏れる光を反射、拡散するからだ。  しかし今はそんな景色も、天から降り注ぐ雪に隠れてよく見えない。俺はため息をつく。  これは、積もるタイプの雪だ。  大粒の、いわゆる「ぼたん雪」と呼ばれる雪は、積もりそうで意外に積もらないものだ。まあ、せいぜい積もったとしても二~三十センチと言ったところだろう。太平洋側では知らんが、この辺りじゃこのレベルでは積もった内に入らない。  一晩で一メートルも積もるような雪は、もっと小粒でサラサラで乾いている。まさに今、窓の外の景色を覆い隠しているそれのように。  こりゃ、明日の朝は早起きして除雪しなきゃ、だな。今日は早く寝ることにするか。どうせヒマだしな。  そう。俺は推薦試験で既に本命の地元の国立大学に合格してしまっているのだ。従って冬休みのこの時期、同年代の受験生諸君には大変申し訳ないが、まことにもってヒマだった。
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