衝動カクテル

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 こらえきれずに熱い吐息を吐き出すと、待っていたように柊が言う。 「いい?」 「だめ」  何も良くない。許可もしたくない。それなのに、言葉以外のあらゆる信号がイエスと答える裏切り行為。  そうして二回目の行為に突入し朝日を迎えて、シャワーの後にホテルを後にする二人。  これをひとはというのだ。週に一回、もしくは二週に一回。駅で待ち合わせてホテルにチェクイン。時にはシャワーを省き、時には二人揃って湯に溺れそうになりながら互いの身体を洗う。  始めから見ず知らずの人間ではなかった。大学の映画研究会という何をするでもないサークルのメンバー同士だった。  きっかけは飲み会の帰り道、なぜか二人はみんなとはぐれて駅へと向かっていた。  彗はハイボールでトランポリンの世界に入り込んでいた。フワフワしていたが意識はハッキリしており、それでいて何から何まで楽しいというゾーンの中。隣りにいる柊は軽く酔っているというが足取りはしっかりしていた。彗が通行人にぶつかりそうになると謝ったり引っ張ったりして冷静だった。 「ここ、入るか?」  足を止めた柊が見ているのは、ズラリとならぶホテルの一つ。ホテルの名前は『シエスタ』だった。彗は込み上げてきた笑いを抑えて、それでも漏れ出る小さな笑い声のまま柊の腕に手を置いた。 「昼寝(シエスタ)だって」  冗談だと思っていた彗に、柊は行くよと宣言すると彗の手首を持ってホテルへ入っていった。  あの日から既に二年。互いに就職し、時間がすれ違うようになったのに、バカ真面目に定期的に連絡を取り合い、生存確認をするかのように抱き合うのだ。
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