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この感情を殺せないなら、仕方がないじゃない。
微睡みの中、汗が冷えて体温を奪っていく。夜に取り残されて意識は自然と覚醒していく。
枕の下はつるりとしているシーツ。身体との接着面は水分を含んでしっとりとしていた。流行りの曲が流れる室内にチカチカと自動販売機の光が点滅する。
内腿に感じる体液すら、熱を失うと途方もない嫌悪感へと変わっていく。
身動ぎをしてどうにか柊の腕からそっと抜け出そうとするが、柊は必ずそんな彗を弄ぶように自分の方へと引き寄せる。
互いに何も身に纏わず、抱き寄せられれば柊の汗を背中に感じる。
「ヤルと眠いからさ」
共に果てた後、柊はそう言って彗を抱いて眠りに落ちる。スウスウと寝息を立てている癖に、抜け出そうとする彗に必ず気がついて引き戻す。朝方眠りから醒めてくると、柊の指は当然のように彗の体を求めて彷徨い出すのがパターンだ。
逃れられない。
もう何年もこんな関係を続けているから、柊の指先は慣れた手付きで彗を甘く誘っていく。
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