ママは魔法使い

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 高校の制服に着替えて一階のリビングへ降りていくと、焦げた匂いが充満していた。嫌な予感がして、ママが作ったお弁当の蓋を慌てて開ける。 「ママ、可愛いお弁当をお願いって言ったよね」 「どう見ても可愛い熊さんオムレツでしょ。胸にハートマークついててほらラブリー」  ハート形にカットされたハムが誇らしげにしている。 「どこがよ! 海苔の目は湯気でどんよりしてるし、口は血みどろケチャップだし。全然可愛くない」 「朝から元気だな、レイカは。パパと朝ごはん食べよう」  パパは少し焦げたパンにバターとハチミツをたっぷりかけてもぐもぐしている。 「文句言うならパパに作ったのり弁と交換すればいいじゃないのーーはい、解決」  パパは「今日は熊弁当か」と苦笑いしている。 「もういいよ、ヨダレ熊で!」  焦げたパンにママお手製のイチジクジャムを塗りたくって食べ始める。 「ねえ。ママは魔法で何が得意なの?」  ママが目をキラリとさせた。 「そうね。げんこつで直せるものなら何でも」 「何よそれ」 「よくママに車のエンジン動かして貰ったな」 「力業じゃない」 「魔法にもセンスがあるんだよ」
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