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「落ち込む事などない。失敗は誰にでもある事だ。慣れない事が続いて、疲れる事もあるだろう。
……そうだな、今日は茶会でもしようか。皆で準備をしよう。皆で語らい、日々の疲れを癒そうじゃないか」
旦那様の提案に、皆一斉に喜びの声を上げました。
「賛成ですわ」「さすがは旦那様」といった言葉が、あちこちから上がります。
――けれども、もちろんそれは、彼女たちの本当の声などではありません。
元から予定されていたわけでもなく、旦那様が突然お茶会を開くなど、未だかつてなかった事なのですから。
あの少女は、旦那様から気に入られている。
特別視されている。
噂は本当だったのだと、そのお茶会をきっかけに誰もが知る事となってしまいました。
旦那様の隣で、頬と耳を染めながらお茶をすする、少女。
そんな少女の姿を見ながら言葉を交わす、お茶会。
そんなお茶会を心の底から楽しんでいる使用人など、誰一人としていませんでした。
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