紅の勇者

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紅の勇者

 どうなってるんだ。  屋敷を出ると、街は出掛けた時とは一変して地獄絵図だ。  屋敷の人も居ないし、寝てた間に何が。 「誰か、居ませんか!」 「こ、ここだ……」 「大丈夫ですか!」  門へ近づくと、先程の門番さんが門に潰されていた。 「お前まだ残ってたのか! てっきり他の使用人と一緒かと……」 「今助けますね!」 「いや、俺は大丈夫だ、それよりエン様を!」 「エンですか? 分かりました、すぐ戻ってきますので、それまで頑張って下さい!」 「そしたらそのまま逃げろ! おい! ったく」  私はただただ走った。炎のせいか、息もまともに吸えず、黒焦げの家屋や、呻く人を放ったらかし、ただ、エンの名を叫んだ。  息も絶え絶えに公園へ辿り着くと、現代の高層ビルのような大きさの体に炎を纏った巨人がそびえ立っていた。  何だ、あいつ……あれが世界を滅ぼすとでもいうのか?  余りにも急な展開、幸いにも奴はこちらに気付いて居らず、公園を素通りできそうだ。  噴水の向こうに誰か居るのが見えた、こちらにはまだ気づいてないのか、1人はうつむいて座っており、周りの2人は立ったまま動かない。 「大丈夫ですか!」  小さく声をかけると、こちらを向く、門番のカランさんだ。 「カランさん、何してるんですか!」 「来るな!」  カランは佐藤を追い払う様に手を振るが、それでも近づくと噴水で隠れていた下半身が見えた。 「カランさん……?」  そこには、1つの真っ黒に焦げて固まった何かが有った。 「来るなって言っただろうがよ」  顔をグシャグシャにして泣くカランさん、その反応でどうしても分かってしまった、その黒こげが何なのか、誰なのか、何故周りの2人が動かないのか。 「サトウお前だけでもさっさと逃げろ」 「そんなこと言わないで下さいよ、カランさんも共に行きましょう!」 「エンもこの街も死んだ、俺が守ってきたものは全て、俺は何を糧に生きればいいんだ?」 「探しましょう、こんな世界です。人の1人や2人生き返らせられますよ」 「確かにそんな伝説はあるが、無謀で無茶だ」 「どうせ死のうとしてたんですよ? 良いじゃないですか、私もお供しますよ」  カランは眼を見張ると、悲しそうに笑った。 「希望を持っても、良いのかな」  それは初めて会った時とは違って余りにも子供の顔だった、いや、早く大人になるしかなかった子供が元の姿に戻ったのだった。  大丈夫、共に頑張ろうと、言おうと口を開く。  だが、それは目前で全てを奪う灼熱によって叶わなかった。 「カラン……さん?」  そこにはもう跡すら残っては居なかった。  その膨大で無慈悲な砲撃を行った存在は、私を睨み、その口に光を集めた。  死んだ。  光が私を包み込んだ。
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