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* 愛は降っても、積もるか否か!? *
***
「議題のまま。愛って、惜しみなく降り注ぐイメージが強いけどさ。愛って、形がないわけで……」
「なるほど。リカの言う通り、まさに『愛は降っても、積もるか否か!?』机上の空論を楽しむには打ってつけの議題だな」
「でしょ、部長?」
なんともアホな会話を繰り広げていると思うことなかれ。
これは歴としたディスカッション。部活動の一コマなのだから。
私が所属する部活動は『机上の空論部』。
その名の通り、机上の空論をアレコレ推論し、ディベートを繰り返す。
……え?
ディベート部と何が違うのかって?
違いは単純明快!
過去そして将来を含めて、絶対に実証できない事例のみを議題対象にしている点が最大の特徴にして、唯一無二のルールである。
例えば、サマータイムの導入や救急車の有料化の是非に関しては、様々なハードルがあるとは言え、実際に行われる可能性がある事例のため『机上の空論部』の議題としてはNGになる。
反対に『単色だけしか存在しない場合の相応しい色は?』と言ったような現実世界であり得ない……つまり、頭の中でしか存在しないような設定ならOKだ。要はあり得ない話を真剣に議論しているわけだ。
つまり、ハッキリ言わなくても奇人そして変人の集まりである。
***
「でも、それってさ。相手に重いと言わせしめれば、積もるんじゃないのかな?」
「確かに積もると言えば、重量は必須。『愛が重い』という言い回しもあるし、愛は積もると言えるか……」
「しかし、所詮は重いなんて比喩表現。愛には実態がないわけで、そうなってくると……」
日本語としての表現含め、白熱しているが……全ては机上の空論。
明日の世界を変える力もなければ、未来の飯のタネにさえならないだろう。
だけど、愚直に突き詰めて考え抜く楽しさが確かにある。
ここまで読んで共感したあなたには是非とも部室に遊びにきて欲しい。
バカバカしいことを真剣に議論する時間はプライスレス。
今しか出来ない青くさい時間がアナタの青春を鮮やかに彩ってくれるだろう。
【Fin.】
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