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淡雪草の花は枯れたが、その部分には新たに綿毛が生えそろっていた。そして、私が思わずくしゅんと、くしゃみをしたときだった。それを合図にしたのか、私から生えたものも、他の動物から生えているものも、いっせいに綿毛を空へと目がけ、放ったのだ。空にはふわふわな淡雪草の綿毛が漂い、一面真っ白になった。毎年見ている光景ではあるけれど、やはりその年の淡雪草の種子の舞う姿は、今まで見た中で一番感動的な光景だった。
いつのまにか、シロが私の横にいて、鼻をぺろぺろとなめ始める。
「シロ、ほらまた来年、淡雪草だらけの犬の出来上がりになってしまうぞ。ああ、わかった。いっしょに帰ろう。私たち、ホラ博士にみっちり調べられちゃうだろうな。」
地面に降り積もった淡雪草の種子たちを踏みしめながら、私は真っ白な犬を飼い主のもとに送り届けた。
おしまい
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